道釈画家

雪舟 天谿

SESSHU Tenkei

雪舟以来540年。
2006年、中国南宋五山の巨刹、
天童寺から「天童第一座」の称号を授与され、
「東海の今画聖」と謳われた日本人道釈画家
2019年(令和元年) 京都相國寺 有馬賴底 老師より「雪舟」道号偈頌拝領、これを襲名

雪舟天谿の言葉

 鎌倉初から室町にかけて禅を拠り所として発展した文化の多くは、その後、日本を代表する「形」や「心」として今に伝承され、現代では広く国際的に周知されている。これら茶道・華道・香道・能楽・武道などに貫徹された崇高な美意識と哲理は、まさに世界に誇れる日本の文化であると言っていいでしょう。
しかしながら現代の急速な欧米化の中で、これらを本来継承すべき次世代の意識が次第に希薄になりつつあるのもまた事実です。
 日本の風土で我々の先達が育み培ってきたこの素晴らしい文化を次世代に着実に伝承、展開していく事こそが精神文化の大国「日本」の在り方であり、その未来を守る事は現代を生きる我々の責務であると考えます。私の継承する雪舟以来の「道釈画」もこの可能性を未来へ託されるべき我が国の重要な文化の一つと言えます。

 ひとたび紙に水を落とし墨を潑(そそ)げば筆の進む先には常に偶発が不断に連続する…。
 これを臨機に応じ禅的直感力を頼りに前へ前へと只管に水で墨を導き、墨で水を追いながら一気呵成と描き進む 。
 やがて偶発の重なりに依って意図を遙かに超えた形がそこに現れ、空気が生まれ、物語が出来上がってゆく…。

 正に「天意」を得て「人意」を超える水墨画千年の本領がそこにある。
 吾が画祖雪舟大師の「破墨法」はこの一究極を示すものであり後代の日本水墨画史に形(ぎょう)・神(しん)両面の偉大な指針となった。
 形無きに形を、音無きに音を、色無きに色を…道釈画は水墨画の一領域でありながらこの超然の境地に在る絶対世界、即ち【妙】を「天意」に委ね求めてきた。
 「達磨図」に達磨はなく只描くは佛法と禅機である。眼に見える達磨を描いて見えぬものをそこに描く…。茲(ここ)に正鵠が在る。

 この世界芸術史に冠たる日本の雪舟爾来の禅の哲理と道釈画の崇高な精神芸術をこそ現代へ継承再生し、次代へ伝え渡さねばならない。

(美術年鑑社2010年刊「水墨画Ⅱ」七類堂天谿より抜粋)