恩恵の譚
童形の千手観音を末広に画く。佛は遍く人の世の綾を取り、一切衆生の縁(えにし)を蓮花に次々と結んでいく…。 大慈大悲の微笑みを以て三世の幸福を見守るのである。人は様々な佛縁に依って出逢い、この夙因に随い境涯を深め、人生を豊かにする。人生は恩恵である。例え文化や宗教・出処が異なろうともこの思いに到るなら何人も憂いや煩慮無く一処一期を共にし乾坤至楽の境地を心に得る。佛が微笑み、人心が笑い、天地万物もまた咲(わら)うのである。 (平成28年版 美術年鑑「特選ギャラリー 七類堂天谿」寄稿文より)