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扇面寿印大機達磨図
センメンジュインダイキダルマズ

天谿さんの頭の中にはまるで発想の行列が出来ているようだ。画題の情景や技法の新しい解釈など…粛々と続々と頭の中で紙面に形を得るのを待っていると言うのだ。そして行列の順番を待っているのが実は天谿さんの方なのだというから驚く。 絵が画家に描いて貰うのを待つのではなく、画家が絵に描かされ導かれるのを待つ…。私はこの捉え方こそが七類堂芸術の特異性であり、ここに天谿道釈画の本質があると思っている。 これを常々天谿さんは自らの署名のあとのニ文字に顕す。「天谿筆受」…天谿が筆に受ける…と。つまり、この画は自ら描いたものではなく天意に依り描かされた…と画中に明言しているわけである。 この画の場合…扇面の構図でさえ達磨が決めていく。その声に良く耳を傾け、墨と水を一気に運ぶ。達磨の 前に印を捺そうとすれば、その背後に様々な印をがさっと固めろと言う。 言われて捺せば、なるほど空間配分上、確かにしっくりと面白い…。ちなみに「寿印」とは印を集め、吹寄せると言う意味だそうだ。天谿さんが作品に現在使用している印の数は250顆とも300顆とも…。印の様式や形状、文意、大小、強弱、捺し方の工夫等…印は画と同様に作品を構 成する極めて大事な要素なのであると天谿さんは語る…。画面の中のこれら全てが共鳴して見る側に反響するのだ。やがて作画の間、聞こえていた声がぴたっと止んだその時…筆受は完了。この達磨図が静かに完成するのである 。

文 ・太書紀
2015年8月 制作

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